オーディオブランド探求 ~UESUGI~
真空管アンプの名門ブランド、ウエスギはアンプ製作者及びオーディオ評論家として活躍された上杉佳郎氏が手掛けた真空管アンプメーカーです。
この人は幼少のころから「天才ラジオ少年」として有名だったようで、3歳にして回路図が理解できたという逸話が残っております。4歳頃より、兄の卓男氏の指導の下、はんだごてを持ってラジオの作成にいそしんでいたようです。
上杉氏が大学4年生の時に、当時の新進気鋭メーカーの「エロイカ電子工業」の常務取締役技術部長の役職で迎えられ、アンプ製作を始めます。しかし周りは自分より年上の人ばかりで、例えば配線作業なども自分の指示通りにやってくれないこともよくあったようで、結果トラブルも多く、ユーザー宅に手直しに伺う事もあったようです。お客様宅にお伺いすると「お前のような若造を呼んだんじゃない。責任者を呼んだんだ!」と言われ、「いえ、私が設計いたしております。」と言うと「君がやっているのか?」と驚かれることもしばしばあったようです。
この人は幼少のころから「天才ラジオ少年」として有名だったようで、3歳にして回路図が理解できたという逸話が残っております。4歳頃より、兄の卓男氏の指導の下、はんだごてを持ってラジオの作成にいそしんでいたようです。
上杉氏が大学4年生の時に、当時の新進気鋭メーカーの「エロイカ電子工業」の常務取締役技術部長の役職で迎えられ、アンプ製作を始めます。しかし周りは自分より年上の人ばかりで、例えば配線作業なども自分の指示通りにやってくれないこともよくあったようで、結果トラブルも多く、ユーザー宅に手直しに伺う事もあったようです。お客様宅にお伺いすると「お前のような若造を呼んだんじゃない。責任者を呼んだんだ!」と言われ、「いえ、私が設計いたしております。」と言うと「君がやっているのか?」と驚かれることもしばしばあったようです。
そんなトラブルがきっかけで、2年ほどでエロイカを退職し、エロイカ電子工業も終焉の時を迎えます。その後「無線と実験」「ラジオ技術」等の技術誌やステレオサウンド誌やスウィングジャーナル誌等のオーディオ・音楽雑誌で執筆活動をしていましたが、アンプ製作の夢は捨てきれず、1971年に自身の名前をブランドにした上杉研究所を設立します。お兄さんの上杉卓男氏との共同創業でした。その企業の時にはエロイカ時代に経験した失敗談などを生かして、何より信頼性を重視した設計と、完璧なアフターサービスを目指しました。創業当初は「永久保証」を謳っていたほどです。
1973年に第1作UTY-1をリリースします。このUTYはUesugi Takuo Yoshioの頭文字ですし、レギュラーモデルのU-BROSは上杉兄弟という具合に、兄弟によるブランドという意味合いを強調していました。ちなみにUTYは台数限定品につける型番です。
上杉氏が求めたアンプの理想形とは、まず第一に増幅素子に真空管を使う事でした。上杉研究所には地下スペースに真空管全盛期に製造された真空管を大量に保有しています。1995年に神戸を襲った阪神淡路大震災では上杉氏の自宅も被害にあいましたが、幸いにも地下に保管してあった真空管倉庫は無事だったとのことで、あの時この真空管がダメになっていたら廃業するしかなかったという話を聞いたことがあります。そしてもう一点はパーツ類はなるべく一般的なものを使うということです。これは音質の継続性と修理の迅速性を図ることで、何年先でも交換や修理が可能にするものです。特殊なパーツは将来的に修理や交換ができなくなることもあり得るとの発想からです。それと何も特殊なパーツを使わなくても、腕があればいい製品はできるという上杉氏の自信の表れでもあります。
1973年に第1作UTY-1をリリースします。このUTYはUesugi Takuo Yoshioの頭文字ですし、レギュラーモデルのU-BROSは上杉兄弟という具合に、兄弟によるブランドという意味合いを強調していました。ちなみにUTYは台数限定品につける型番です。
上杉氏が求めたアンプの理想形とは、まず第一に増幅素子に真空管を使う事でした。上杉研究所には地下スペースに真空管全盛期に製造された真空管を大量に保有しています。1995年に神戸を襲った阪神淡路大震災では上杉氏の自宅も被害にあいましたが、幸いにも地下に保管してあった真空管倉庫は無事だったとのことで、あの時この真空管がダメになっていたら廃業するしかなかったという話を聞いたことがあります。そしてもう一点はパーツ類はなるべく一般的なものを使うということです。これは音質の継続性と修理の迅速性を図ることで、何年先でも交換や修理が可能にするものです。特殊なパーツは将来的に修理や交換ができなくなることもあり得るとの発想からです。それと何も特殊なパーツを使わなくても、腕があればいい製品はできるという上杉氏の自信の表れでもあります。
ウエスギアンプは良質な真空管と巧みな回路設計、そしてきれいなワイヤリングでクオリティの高い再生を可能にしました。私がウエスギアンプを初めて聴いたのは東京の某オーディオショップにいた時で、真空管らしからぬキレのある「辛口」の音にちょっとびっくりしたのを覚えています。当時はまだ規模の小さい工房みたいな生産体制のようで、納期がやたらかかって、長いものだと1年くらいかかっていたものもありましたが、1年待っても手にしたいと思うほどの魅力があったのだと思います。
上杉氏はオーディオ評論家としての立場もありますので、オーディオ雑誌での自社製品の論評はしないと決めてそれを徹底していました。以前、私がすみやに来て初めてのオーディオイベントを開催した時に、ティアックの紹介で上杉氏に講師としてお越しいただいたことがありました。その時に「せっかくですからウエスギ製品のご紹介もしてください」とお願いしましたら、簡単に製品の概要をお話しいただきました。そしてイベント終了後に「今回は当社の宣伝もさせていただきましたので講演料はいただきません」とおっしゃってびっくりしたことがありました。それだけまじめで律儀で、素晴らしい人格者だと思いました。(さすがに無料というのは申し訳ないので、ご自宅に洋酒を送らせていただきました。)
上杉氏はオーディオ評論家としての立場もありますので、オーディオ雑誌での自社製品の論評はしないと決めてそれを徹底していました。以前、私がすみやに来て初めてのオーディオイベントを開催した時に、ティアックの紹介で上杉氏に講師としてお越しいただいたことがありました。その時に「せっかくですからウエスギ製品のご紹介もしてください」とお願いしましたら、簡単に製品の概要をお話しいただきました。そしてイベント終了後に「今回は当社の宣伝もさせていただきましたので講演料はいただきません」とおっしゃってびっくりしたことがありました。それだけまじめで律儀で、素晴らしい人格者だと思いました。(さすがに無料というのは申し訳ないので、ご自宅に洋酒を送らせていただきました。)
そんな上杉氏も、上杉ブランド創設40周年を翌年に迎える2010年12月に肺がんで68歳の生涯を閉じてしまわれましたが、その前年の2009年に上杉氏から「一緒に仕事をしませんか」と依頼を受けたのが藤原伸夫氏です。
上杉氏も健康上の理由から自分のブランドを引き継いでくれる後継者を探していたのだと思います。藤原氏は長年ビクターのオーディオ部門で開発を担当していた方です。LaboratoryシリーズのモノラルパワーアンプME-1000の開発者でもあります。お二人は以前よりエンジニアと評論家として親交があり音楽の趣味やアンプ設計の理念など共通点も多く、藤原氏はその要請を受けて上杉氏からその哲学を学んでいるときに上杉氏の容体が悪化して急逝してしまいます。その後正式にウエスギブランドを継承していくことになり、2011年にウエスギメモリアルアンプとしてU・BROS-2011PとU・BROS-2011Mを発売しました。
上杉氏も健康上の理由から自分のブランドを引き継いでくれる後継者を探していたのだと思います。藤原氏は長年ビクターのオーディオ部門で開発を担当していた方です。LaboratoryシリーズのモノラルパワーアンプME-1000の開発者でもあります。お二人は以前よりエンジニアと評論家として親交があり音楽の趣味やアンプ設計の理念など共通点も多く、藤原氏はその要請を受けて上杉氏からその哲学を学んでいるときに上杉氏の容体が悪化して急逝してしまいます。その後正式にウエスギブランドを継承していくことになり、2011年にウエスギメモリアルアンプとしてU・BROS-2011PとU・BROS-2011Mを発売しました。
パワーアンプのU・BROS-2011Mは管球王国に投稿された上杉氏最晩年の作TAP39がベースとなっているモノラルパワーアンプで、U・BROS-2011Pは上杉流プリアンプに藤原氏のスパイスのかかった作品で、上杉氏をトリビュートした記念碑的作品です。この組み合わせは現在も販売をしておりますが、国内で手に入る現行セパレートアンプ(しかもモノラルパワーアンプ2台)の中で120万円というプライスタグは抜群にコストパフォーマンスの高いお買い得モデルと言えるものです。一般家庭でお使いになる分にはパワー不足を感じることはないと思います。しっとりとしなやかな中にもキレと繊細感を感じるサウンドはUESUGI 独特の世界と言えるでしょう。実は私もこの組み合わせで使っていますが、価格を考えればこのクオリティには大満足です。そしてフォノイコライザーの出来が良くてレコードが楽しいです。(ただしMM入力のみですのでMCカートリッジをお使いの方は昇圧トランス等が必要になります。)この組み合わせは店頭にもございますので是非そのクオリティの高さを体験いただきたいと思います。
新生ウエスギブランドを継承している藤原氏も上杉氏と同じく実直な方で、ウエスギサウンドをベースに新しい回路を盛り込んで、さらに進化したサウンドを目指しています。2014年に登場したKT120を使ったサークルトロン出力回路を採用したモノラルパワーアンプU・BROS-120も出力トランスを新設計とし、ドライバー段も前作のトランジスターから真空管に変更してU・BROS-120Rとしてバージョンアップモデルをリリースしまして、透明感と聴感上のS/N感が大幅に向上したと評判です。
このように常に新しい回路やディバイスを取り入れながらも、上杉氏が求めたサウンドポリシーを保ちながらクオリティアップを目指す藤原氏のウエスギアンプを今後も是非ご注目ください。
このように常に新しい回路やディバイスを取り入れながらも、上杉氏が求めたサウンドポリシーを保ちながらクオリティアップを目指す藤原氏のウエスギアンプを今後も是非ご注目ください。