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N mode 1ビットアンプ試聴記


縁あってNmodeの1ビットデジタルアンプを聴く機会がありました。
Nmodeというメーカーは名前は知っていたのですが、ほとんど予備知識はありませんでした。調べてみるとNmodeというのはブランド名で、社名は㈱リリックで現会長の布村常夫氏が2008年に起こした会社でした。

布村常夫氏は長年シャープで技術開発をしていた方で、その中で1999年に1ビットデジタルアンプの開発を行った中心人物です。SHARPの1ビットアンプというとSM-SX100というアンプのフットが円錐形になっている特徴的なデザインの製品があり話題になりましたが、当時100万円もしたアンプでその価格に驚いて音の印象はあまり残っていませんでした。
その後シャープを定年退職されて、地元の鹿児島市に㈱リリックを設立してNmodeブランドで1ビットデジタルアンプを作り続けております。

今回試聴したのはフルコンポサイズのX-PM7MKⅡ(¥300,000)とハーフサイズのX-PM3(¥130,000)とマスタークロックジェネレーターのX-CL3(¥168,000)の3機種です。

まずX-PM7MKⅡですが、これはなかなかいい音でした。前作のX-PM7は残留ノイズがかなり大きかったようで、特にHモードの時は目立っていたようです。このモード切替はノイズ対策の一環として付けられていたものですが、今回のMKⅡは残留ノイズは全く感じません。電源部もX-PM7もRコアトランスも3個使って充実しておりましたが、MKⅡは容量アップしてさらに大型のRコアトランスを使用しています。電流供給能力も大幅に上がって、スピーカーの駆動力が格段に上がっています。

クロック周波数はX-PM7が12MHzなのに対してMKⅡは24.5MHzとさらに高くなっています。ハイレゾのサンプリング周波数と同じように、周波数が上がると滑らかさとキレ味は上がっていきますね。MkⅡは外部クロック入力も持っていますので、X-CL3を使って5.6MHzに落として聴いてみましたが、キレ味はやや後退して落ち着きが出てきました。そういう意味ではクロック周波数による音色調整が可能ということが言えるかもしれません。
このアンプのポテンシャルの高さは十分理解できましたが、惜しいのはパネルデザインでしょうね。シンプルといえばシンプルですが、30万円という価格を考えればもう少し高級感というか見栄えのするものになれば、市場でかなり評価されるものと思われます。かえって初期のNmodeのデザインのほうが個人的には好感が持てました。音の良さとクオリティは間違いなく一級品のレベルですが、デザインで損をしている部分が相当あるように思います。

デザインという意味ではハーフサイズのX-PM3のほうが好ましく思えます。
ミニコンポ的なシステムをお持ちの方で、もう少し音を良くしたいというお客様には最適な商品です。X-PM7MKⅡのクオリティまでは望めませんが、小型のスピーカーを鳴らす分には驚くほどのクオリティアップが図れます。低域の押し出しはX-PM7MKⅡのほうが強いですが、中高域のキレの良さは遜色ないレベルだと思います。こちらはデフォルトのクロック周波数が11.2MHzですが、X-CL3を使うことによって5.6MHzから24.5MHzまで6種類のクロック周波数が選択可能です。

なお、サイズの関係で電源はACアダプターですが、同サイズの強化電源ユニットX-PS3(¥89,800)を使うことによってクオリティアップさせることが可能です。今回は試すことができなかったのですが、かなり飛躍的に変化すると思います。このユニットはハーフサイズの製品4台を賄うことができますので、マスタークロックジェネレーターやD/Aコンバーター、ヘッドフォンアンプ等をまとめてつなぐことが可能です。こうした発展性があるのがマニアックなところで面白いと思います。

正直1ビットアンプが今も健在で、しかも進化をしているという現実を認識していなかったので驚いたことは正直に告白しなければなりません。オーディオも趣味性の強いハイエンド製品だけでなく、もっとお手軽な価格で音の良いアンプを探している方も多いと思います。そうした方々にこのNmodeの1ビットアンプを一度聴いていただきたいと思います。20年前にSHARPで1ビットアンプを開発した方がその技術を進化させて、現在でも製品として作り続けているというその努力と執念に敬服と尊敬の念をいだいた今回の試聴でした。