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GLANZトーンアーム試聴記


上からMH-124S/MH-104S/MH-94S

先日、GLANZのトーンアーム試聴会の時に持ってきていたBtシリーズのトーンアームが何となく気になって、濱田氏に貸し出しをお願いして自宅に持ち込んでテストをしてみました。

もう何年も前に、GLANZのSシリーズのトーンアームをお借りしたことがあって、これが素晴らしい音質ですごいなあと思っていました。その当時はMH-94S/MH‐104Sといったショートアームは価格が47万円でした。それでも高いなあと思いましたが、音を聴けばヌケの良いシャープなサウンドでたいそう驚いたものでした。そうこうしているうちにこのアームが値上げになって65万円と18万円も上がってしまいました。金額的に「無理!」とあきらめていたのですが、最近その下のクラスの新製品が発売されたとのことで、試聴会の時にじっくり拝見させていただきました。

GLANZのトーンアームはアームパイプにステンレスを使用しており、それは下のクラスのBシリーズでも変わりません。濱田氏いわく、アームパイプの素材は音質に大きくかかわるのでここは譲れないとのことでした。
Sタイプはアームパイプ以外にも支点部のハウジングやアームレストのベースもステンレスでそれなりのコストがかかっています。濱田氏がトーンアームの理想を求めて開発したシリーズといえるでしょう。

Bシリーズでは基本コンセプトは継承して、いかにコストを抑えるかを開発のテーマにしたハイコストパフォーマンスアームです。このアームも発売当初は14.8万円でしたが、Sシリーズの値上げのタイミングで2万円アップの16.8万円となってしまいました。濱田氏によると、このアームは同社の宣伝も兼ねて、もともと利益なしでの戦略モデルで作ったようですが、最近のパーツの値上がりが著しく、赤字になってしまって値上げせざるをえなかったようです。
その意味では新製品のBtシリーズは、Bシリーズの音質をSシリーズに如何に近づけるかをテーマにした製品で、最新の設計思想と(適切な)コスト計算により誕生した、ある意味価格と性能がきちんとバランスしたトーンアームといえるのかもしれません。

Btシリーズは基本構造がBシリーズと共通ですが、アームパイプの充填剤がポリエステル繊維のフェルトとカーボン繊維の二重巻きになっています。この充填はかなり大変なようで1本充填するのに2時間かかるそうです。またウェイト部は立ち上がりを悪くしないように内側からアルミ/プラスチック(ABS)/紙/タングステン棒をゴムで接着と4重構造として振動吸収を図っています。タングステンは比重が重く、これを使用することによりウエイトを小型化することができ、このウェイトのみでSPUカートリッジも使用できます。
もう一つ、これはBシリーズと共通ですが、アームレストとアームリフター及びインサイドフォースキャンセラーのベースがプラスチック(ABS)で、これも不要共振を低減させる工夫です。

GLANZのウェブサイトやカタログにはそれぞれのトーンアームにおける濱田氏の設計思想や設計構造が細かく説明されています。なかなか難しい内容ですが、濱田氏のこだわりが良くわかる文章ですので、興味のある方はお読みいただければと思います。(濱田氏の略歴を見るとかなり面白い方だということが分かります)

さていよいよそのBtシリーズの試聴です。お借りしたのは10インチのMH-10Btです。
自宅のアナログプレーヤーは、LUXMAN PD-350(アームレス)にトーンアームがSAEC WE-407/23、カートリッジはBENZ MICRO WOOD/SLです。(なおPD-350はターンテーブルプラッターに吸着システムを搭載していますが吸着のほうは今は機能していません)これにスタビライザーがTechDASのDisc Stabilizer SeriesⅡ、フォノケーブルにACOUSTI REVIVEのANALOG-1.2TripleC-FMという組み合わせです。

ポイントは数年前に聴いたSシリーズ(MH-94S)の音との違いです。今回はSシリーズはお借りしていないので、当時の印象をたどるしかないのですが、記憶に残る印象ではそれほど大きな違いはないという感触でした。当時とはスタビライザーとフォノケーブルが違っていますのでその分の変化はあると思いますが、切れ味鋭いシャープな音という感想です。濱田氏は立ち上がりの早い音を目指したとおっしゃっていましたが、このシャープネスはそれを表しているのだと納得しました。ちょうどCDプレーヤーにマスタークロックジェネレーターを接続したときに感じた、音のにじみのない音場感あふれるサウンドで世間一般のアナログサウンドとはかなり違う印象でした。ジャズのホーンセクションが今までにない輝きを持って迫ってきました。またサンバ・ボサノバあたりでは乾いたリズムとパーカッションが非常に心地よかったです。

結論としてはSシリーズに近いレベルまで迫っているという印象です。得点で言えばSシリーズが100に対して75か80といったところでしょうか。名器の誉れ高いSAEC WE-407/23ですが、いい意味でアナログ的というか優しい音です。しかし現代のハイエンドオーディオの世界ではアナログレコードもクリアでシャープ、そして音場感あふれるサウンドが楽しめることをはっきりと認識しました。そういえばSAECもWE-407/23の現代版でWE-4700を発売しましたが、これも多分このような印象で聴けるのではないかと想像ができます。ただ119万円はちょっと手が出ませんね…。(涙)

最後に、現在LUXMANのPD-171/PD-151をお使いで、更なる音質向上を図りたいという方はMH-9B/9Btであれば付け替え可能です。PD-171A/PD-171ALはアームベースの換装によって様々なアームに付け替え可能ですが、171/151では基本的にアームの付け替えができません。しかしMH-9B/9Btは有効長が同じなため付け替えが可能です。ただしアームの取付穴のサイズが違うため、GLANZで用意している取付ベースが必要です。価格は3万円と高いですが、ステンレス製で300gの重量がありますのでこの部分だけでも音質的にかなり良くなります。PD-171/PD-151はトーンアームがネックでしたがGLANZに替えれば飛躍的なクオリティアップになります。当店にご連絡いただければデモ用のアームを用意しての比較試聴も承ります。