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Phasemation EA-1200 試聴記


フェーズメーションの緑川氏から年末に連絡がありまして、「フォノイコライザーのEA-1200のデモ機が空いているので、聴いてみませんか?」とのことで、店内で鳴らしています。
フェーズメーションはアナログレコード再生には並々ならぬこだわりを持っているメーカーでして、MCカートリッジで6機種、フォノイコライザーアンプで6機種、MC昇圧トランスでも4機種のラインナップを展開しております。アナログレコード関連品でこれだけの製品群を用意しているメーカーは他にはないと思います。特にフォノイコライザーアンプとMC昇圧トランスのラインナップの多さには驚くばかりです。

同社がハイエンドオーディオブランドとして登場したのは、2002年に商品化したMCカートリッジのP-1(¥150,000)でした。当時はフェーズテック(Phase Tech)というブランドで、2010年にPhasemationへとブランド名が変更になりまして現在に至っております。
このあたりのいきさつは、過去のブログで一度ご紹介していますので、ご覧いただければと思います。

さて今回のEA-1200(¥1,200,000)ですが、2012年に発売になったEA-1000(¥900,000)の後継モデルです。製品のアウトラインは、L/R独立で使いやすさと、高音質部品にこだわった、新規設計の真空管式LCRイコライザー部と、前作をベースに更なるノイズ対策を施した左右共用電源で、ブラッシュアップした意欲作です。この真空管式LCRイコライザーを採用しているのは、フェーズメーションの最上位の6筐体セパレートタイプで究極フォノイコライザーアンプのEA-2000(¥3,300,000)のみでしたが、このES-1200にも採用されて信号増幅の低インピーダンス化に大きく寄与しています。また電源部も、もう一台追加して完全モノラル使用ができるようにPS-1200という専用追加電源(¥430,000)もラインナップされています。
また電源部は増幅回路に影響しないようにするため、別筐体にすることはもちろんですが、より低ノイズ化していることが特徴です。そのために、大容量のRコアトランスを選んでシールドし、原理的にスイッチング・ノイズを発生させない整流管5U4Gを採用しています。

さて気になるその音質ですが、やはり一皮剝けたクオリティの高い音質でした。一番驚いたのが「低域の厚み」でした。低域を中心としたピラミッドバランスの、均整のとれた音質は安定感抜群です。「レコード盤にこれほどの良質な低域成分が入っていたのか!」と思わず感心してしまうくらいのクオリティの高い音楽を楽しめました。当店にはPhasemation のミドルクラスフォノイコライザーアンプEA-350(¥430,000)が展示してありますが、このフォノイコライザーアンプもなかなか優秀なのですが、さすがにこれを凌駕するクオリティでびっくりしました。この低域の厚みはEA-1200でなければ表現できない世界なのだと理解いたしました。

もう一つの魅力は「程よい温度感」でありましょう。これはCD/SACDではなかなか表現しにくい部分かと思います。デジタル音源は解像度とかディティールの表現等は素晴らしいものがありますが、人肌の温度感というところはなかなか表現しにくいところかと思います。レコードの場合は、まず最初にこの温度感というものが感じられるかどうかでクオリティが決まるといっても過言ではありません。しかしこのあたりの感触は、初心者向けのアナログプレーヤーではなかなか分かりにくいと思いますが、こうしたグレードの高いアナログプレーヤーとフォノイコライザーアンプを接続して聴いてみれば良くご理解できるものと思います。

試聴は4枚のレコードで行いました。まお、4枚ともEA-350との聴き比べを致しました。
「シェラザード」はEA-1200での音楽の押し出しの強さと、静寂感に驚きました。
「ワルツ・フォー・デビー」ではEA-1200でのベースの響きが素晴らしかったです。EA-350はEA-1200に比べると全体に柔らかくておとなしい印象がありました。
「ナイト・バード」ではEA-1200での、エヴァ・キャシディのヴォーカルの力強さと艶めかしさに酔いしれました。
「クール・ストラッティン」は「シェラザード」同様、押し出しの強さがありました。EA-350は割とあっさりとした印象がありました。
カタログデータを見ると、EA-1200と最上位のEA-2000はMC/MMとも、他のフォノイコライザーアンプよりも利得が2dB高いことが分かります。このあたりが押し出しの強さに寄与しているものと思われます。

TecDas Air Force 10

しかしアナログレコードの世界というのは本当に奥の深い世界で、追求していけばどこまでも未体験のものが見えてきて、限界というものが存在しない独特の「美の世界」のような気がします。もともとオーディオの世界そのものが「奥の深い世界」ですが、アナログレコードはそれの最たるものでありましょう。単純にレコードプレーヤーと言っても1万円くらいのお手軽品から数千万円の超ハイエンド器まで存在するという、このレンジの広さが物語っています。
昨年の東京インターナショナルオーディオショーではTechDasブランドで500万円のトーンアームが出品されていました!
またアナログレコード関連品はプレーヤー本体だけでなく、カートリッジやヘッドシェル、シェルリード線、ディスクスタビライザー、ターンテーブルシート、トーンアームケーブル、アースケーブル、他にもレコード盤や針先のクリーニング関連品など、細かいものまで入れたらそれこそ星の数ほどある世界です。そうした多種雑多な製品の中からユーザーの主義主張にあったものを選択するのも、これまたオーディオの醍醐味でありましょう。このブログをお読みの方も、ご自身のできる範囲で「アナログレコードの世界」をお楽しみいただければと思います。
(記事内の価格表記はすべて税別価格です)