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Accuphase E-800 試聴記


昨年のインターナショナルオーディオショーで大きな話題となりました、アキュフェーズの純A級プリメインアンプのE-800のデモ機を再びお借りすることができましたのでいろいろと聴かせていただきました。

アキュフェーズも2022年には創業50周年を迎えます。40周年の時は各カテゴリーの記念モデルを複数年にわたってリリースをいたしましたが、50周年も同じような形で記念モデルを開発するようで、このE-800が50周年記念モデルの第1弾として位置づけられています。

アキュフェーズのプリメインアンプ史上初の50W+50W(8Ω)出力A級増幅のモンスタープリメインアンプですが、まず驚くのはそのサイズです。巾は他の製品と同じですが、高さ239mm・行502mmはもう大型パワーアンプサイズです。あまりの高さでボリウムと入力セレクターのツマミが小さく見えるほどです。放熱対策のため高さは必要だったようですが、他社のA級プリメインアンプと比較しても極端に熱くなることもなく安定動作いたします。しかしプリメインアンプとしては異例なほどの大きさですが、何日かすると見慣れてきてさほど違和感はなくなってきました。実際パワーアンプのA-75とほぼ同等のサイズです。重量はA-75が44㎏なのに対してE-800は36㎏と軽量なのでサイズの割には軽く感じます。

さてその音質ですが、クオリティもモンスター級でした。まず印象に残ったのはノイズ感の少なさです。データで比較してみると、今までのアキュフェーズの最上位プリメインアンプとして君臨していたE-650のS/N比と2 dBの違いがあるのですね。この違いは雑味感のない澄み切った空気感と3次元的な音場の広がりという形で実感することができます。このクラスになると1 dBでも違いが出ますが、2 dBとなると一聴して分かります。
そして圧倒的なドライバビリティです。音量をさほど上げなくても音楽のダイナミズムを実感することができて、B&Wの803D3がまるで水を得た魚のように生き生きと鳴りだしました。このドライブ感というかグルーブ感のようなものが、プリメインアンプであまり感じたことがなかったので、これも驚きでした。
昨年末に発売間もないタイミングでお借りできた時にも、興味のあるお客様にご案内をして「フリー試聴会」という形で聴いていただきましたが、お客様の反応もおおよそ同じ印象で、「これはもうプリメインアンプの音じゃないね」という感想が多かったです。

プリメインアンプは一つの筐体の中にプリアンプとパワーアンプが同居しているわけですが、プリ~パワー間のケーブルを使わずに、回路的に最短経路で結ばれるということがいかに有利かということが理解できた気がしました。
アキュフェーズの場合はフォノイコライザーやD/Aコンバーターもオプションボードで直結できるなど伝送経路の短縮化という観点では一歩先んじているメーカーです。最近はマークレビンソンやエソテリックあたりでもフォノイコライザーやDACを内蔵している、あるいは内蔵できるプリメインアンプが増えてきていますが、趣味のオーディオの世界も極限を追求したセパレートアンプがある一方で、セパレートアンプのクオリティを一体型のプリメインアンプで実現するという省スペース傾向に向かっていくのかも知れません。

しかしこれは単なる省スペース化というよりも、プリ部とパワー部で音色の傾向をそろえるという意味でいけばそれぞれのメーカーで理想のサウンドを構築できやすくなるわけですね。広いスペースで大型スピーカーをハイパワーで鳴らすという環境でなければ、質の高いプリメインアンプを使ってそれぞれのスピーカーの個性を引き出すという方法は現代の住環境に適しているともいえます。これからの時代を考えると、省スペースでいかにクオリティの高い音楽を楽しむかが一つの課題となりそうですので、そうした要望には十分期待に応えてくれそうなアンプだと確信した今回の試聴でした。