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オーディオメーカー探訪 その1 アキュフェーズ(番外編)


私がアキュフェーズというメーカーを知ったのは、23歳の時に東京の某オーディオ専門店に入社した時でした。それまで私はとてもオーディオ愛好家とは言えず、自分で使っていたシステム以外の製品はほとんど知りませんでした。アキュフェーズもその店に勤めるようになってから知ったという情けない状況でした。この販売店は都内でも有名なショップで、大した知識もない私にとって非常にハードルの高い店で、毎日が修行のような日々でした。
実際入社してから1年間は先輩から毎日怒られていました(汗!)

そんな私がなんで入社できたのかはよくわかりませんが、役員面接のときにこんなことがありました。実は大学を卒業して最初に就職したのは、訪問販売の会社でした。そこはSONY製のラジカセ1台を持って、都内の雑居ビルの事務所などに飛び込んで一通りのデモを行って、現金またはクレジットで契約してもらうという飛び込みセールスをしていました。定価49,800円のラジカセ本体にキャリングケースやカラオケ用のマイクとテープなどを付けて79,800円で売っていました。しかも値引きは一切なし。値引くと自分の給料から引かれました。今でいえばブラック企業ですね。当時はネット通販などもなく、「お父さんのお小遣いで買ってください」というゲリラ商法で廻っていました。私が入ったときには新入社員が40名くらいいましたが、5か月でやめたのですが、その時には4人しか残っていませんでした! そのデモの中でマイクミキシング機能を生かして、カラオケで1曲歌うというお約束がありました。役員面接で社長から「どうやって売っていたかちょっとやってみてくれ」と言われて、エアーで一通りのデモをして「ここから1曲歌うのですが歌いましょうか?」と言ったら「それはいいです」と断られました。結局採用ということになったのですが、「今度の新入社員に社長の前で歌を歌いそうになった奴がいる」と話題になってしまいました(笑)

そんな販売店で5年を過ごし、家庭の事情で実家の静岡に戻ることになったのですが、その時に「向こうへ帰って仕事はどうするの?」と心配してくれたのはアキュフェーズの川上さんというセールスの方でした。「もしオーディオの仕事を続けるならばお店を紹介するよ」とも言っていただきました。その時に紹介されたのがすみやでした。
そんな事情もあって私とアキュフェーズとの関係は普通の社員よりも深いものがありました。すみやに入ってからも、オーディオ好きでマルチアンプシステムを組んでいる川辺 哲 副社長(現すみやグッディ社長、すみやサウンドギャラリー社長)の影響で、JBLのスピーカーユニットとアキュフェーズのF-25チャンネルディバイダーを使ってマルチアンプシステムを組んで、最終的にはDF-55を使って4ウェイマルチアンプシステムを組みました。

すみやに入ってから10年近く経った頃でしょうか、アキュフェーズの本社にお伺いをして勉強会をしていただいたことがありました。午前中にアキュフェーズの歴史と歴代製品のレクチャーと技術解説、午後からは春日二郎氏宅と出原真澄氏宅のお宅にお邪魔してそれぞれのシステムの音を聴かせていただきました。両氏ともすでに他界されてしまいましたので、これは大変貴重な体験でした。

春日氏のシステムは最低域にFostexの80㎝スーパーウーハー、低域はAITECの15インチウーハーを片チャンネル4発とゴトーホーンを中域と高域に使って、さらにスーパーツイーターを使った5ウェイマルチアンプシステムでした。かなり大掛かりなシステムですが、聴かせていただいた音はまるでフルレンジスピーカーを聴いているかのような絶妙なバランスで本当に驚きました。当時の私はまだマルチアンプシステムを始める前で、その苦労のほどはよくわかっていなかったと思いますが、ここまで仕上げるのにどれくらいの年月がかかるのだろうと今になって改めて思います。
出原真澄氏のシステムは資料が残っていませんのでうろ覚えですが、新築かリフォームされたばかりのリスニングルームで、確か46㎝ウーハーをスーパーウーハーとして床に向けて放射させた底面開放型のエンクロージャーが真ん中にあって、ウーハーはJBLのダブルウーハーを使った4ウェイマルチアンプシステムだったと記憶しています。その音は若さ溢れるダイナミックなサウンドで、エネルギー感が素晴らしかった印象があります。
両氏ともさすがにマルチアンプの達人で、それぞの好みと音楽に対する感性でご自身のサウンドを表現されていて、マルチアンプシステムの奥深さを改めて認識した次第です。

今はスピーカーユニット単体を販売しているケースが少なくなって、手軽にマルチアンプシステムを組むにはやりにくい時代になってしまいましたが、オーディオの醍醐味と奥深さを追求するには究極のシステムだと思います。現在のチャンネルディバイダーはデジタル処理ですので、クロスオーバー周波数やレベル調整の制度は飛躍的に向上しています。また各帯域にデジタルディレイがかけられますので、昔のようにそれぞれのスピーカーユニットをミリ単位で前後に移動して位置調整する手間がなくずいぶんと調整が楽になりました。私も転居とともにマルチアンプシステムを手放してしまいましたが、スペースとお金があれば再度取り組みたいと思うほど挑戦のし甲斐がある魅力的なシステムでありました。